それはきっと、君に恋をする奇跡。



お母さんは毎日仕事に出かけているらしいから、この時間蒼はひとりで家にいるはず。



「蒼!蒼!」



チャイムを押しても応答がないから強硬手段に出る。


ドアノブを引いて、名前を呼んだ。



───ガチャ。



それが功を奏したのか、ドアが開く。


ドアを開けた蒼はあたしを見て目を丸くしていたけど、あたしだって同じ。



「……っ」



その姿は、蒼の面影を消してしまうほどやつれていたから。


お葬式で見たあの日の蒼とほとんど変わらない。

むしろ、もっと状態は悪くなっている気がした。



……蒼の時間はまだ、あの日から止まったままなんだ。



「…………蒼」



蒼の苦しみを如実に表したその姿に、あたしまで飲みこまれそうになる。



蒼はそのまま玄関先にしゃがみこんでしまった。



「っ…も、俺……死んじまいたいくらい悲しい……わかってたけどっ……ハルがいない世界が、こんなにも悲しいなんて……っ……」



そう言って、新たな涙をこぼす。