他のクラスの水槽は、藻が生えていたり水が緑ににごったりしているが、俺が掃除をしているからこのクラスの水槽はいつもキレイだった。


褒められたくてやってるわけじゃないし、人に知られるのはあまり意としていない。



「全部水瀬くんがやってるんだよ」



遥輝がそう言うと、クラス中から「えっ」という驚きの声が上がった。



「俺は、そんな水瀬くんが人の財布を盗ったりなんて絶対にしないと思う」



優等生の遥輝がそう断言すれば、俺を容疑者へと仕立て上げようとしていたクラスの空気に逆風が吹く。



「武田くんもよく探してみてよ。それからみんなも。誰かの鞄に紛れちゃってる可能性もあるんだから、全員が一度確かめてみる必要があるよ。ひとりだけをみんなで疑ってかかるのはよくない」



……俺が当事者じゃなかったら、生意気なこという奴だなって思ったに違いない。


でも、この時の俺には。


涙が出るほど嬉しい言葉だった。



「俺は、水瀬くんを信用してる」



そう言った遥輝の目を、俺は一生忘れないだろう。





結局、武田の財布は自宅にあった。

手提げに入れたのは思い違いだったらしい。