どうやら深い眠りについている蒼は、うるさかったであろうさっきのやり取りでも目覚めなかったよう。
頬を見れば、涙の痕がうっすら残っていた。
「蒼……」
そこに優しく指を乗せて。
さっき拭えなかった代わりに、その痕をそっと撫でた。
悩みひとつないと思っていた蒼は。
あたしの知らないところで大きな苦しみと戦っていたんだね。
蒼こそ、ツラい想いを抱えてずっと過ごしてきたんだね。
「ごめんね……あたし、なにも知らなくて……」
いつも頼ってばかりでごめん……。
あたしの悩みやツラさは、なんて幼稚だったんだろう。
なのに、蒼は真剣に聞いてくれて言葉をかけてくれた。
いつでもすぐに気づいて飛んできてくれた。
すごく、優しい人……。