それはきっと、君に恋をする奇跡。



「そういえば左手に包帯巻いてたけど、どうしたの?」



蒼の左手について久保先輩が聞いてくる。



「体育のバスケで骨折したんです」


「はあ……?体育のバスケで骨折……?」



あたしが伝えると、信じられないように口をあんぐり開ける。

バスケ部員だった蒼が授業程度の内容で骨折するのに違和感があるのは、久保先輩も同じよう。



「ったく蒼のヤツ……」



久保先輩がボソッと言葉を落とす。



「まだ無理してんのか……」



……え?


ひとりごとの様なその言葉をあたしは聞き逃さなかった。



「それ……どういうことですか?」



詰め寄ったあたしに久保先輩は、本当に独り言だったのか「こっちのこと」と手を振りながらごまかそうとするから。



「あの……蒼……なにかあるんですか!?」



その前に回り込んだ。



「新田さん……?」



行き場を失った久保先輩の足はピタリと止まり。



「……陽菜?」



その剣幕に、あたしの気持ちを知っている真由ちゃんも不安そうに声を落とす。


久保先輩と蒼が同じ中学で同じ部活だったなら、何かを知ってても不思議はない。