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「やっべー、折れてた」
そう言いながら元気よく蒼が登校してきたのは翌朝。
そんな言葉にはっとして視線を注ぐと、蒼の左手は包帯ですっぽり覆われていた。
いつもと変わらない軽い声とは裏腹に、見た目はかなり大ごとになっている。
「はあ?うっそだろー?」
結城くんがあげる気の抜けたような声は、ほんとに骨折していると思っていなかったみたいだけど、あたしだって同じ。
骨折なんて大げさだと思ってた……。
「いや、マジだってー。レントゲンにピキッって線が入ってたわー」
その痛々しい包帯姿を蒼が掲げると、なぜか男子たちの間では白い歯が零れ落ちた。
「おいおい、授業程度の内容で骨折すんなよー」
「バスケ部の俺から言わせてもらえば、どうやったらそんなに簡単に骨折するのか謎!」
「そもそもバスケってそんなすぐ骨折する競技じゃねえからなっ」