それはきっと、君に恋をする奇跡。



「ああ……ちょっと、な」



藤野さんは、蒼の指を見ると顔色を変えた。



「先生っ!蒼の手がヤバい!!!」



その声にみんなが一斉に蒼を見ると、蒼は椅子に深く腰掛け息を吐いた。

まるで観念したように。



「なんだよその手!だから言ったじゃんかよ」


「無理すんなっつったのに」


「今すぐ病院行った方がいいんじゃねえの!?」



結城くんやいつもの仲間が立ち上がり、心配そうに声を掛ける。



「あははっ、かもなー。思ったより痛かったわ」



蒼は右手を軽く上げ、痛そうな顔ひとつせずに苦笑いした。


……こんな時にまで、笑って。


さっきまで、すごく痛そうな顔してたのに。



「ひとまず水瀬は保健室に行け。藤野、付き添ってやれ」


「はぁい」



隣のあたしじゃなくて、藤野さんが先生に指名され。


ふたりは寄り添うようにして教室を出て行った。





あたしだって気づいていた。


あたしだって心配でたまらなかった。



でも。



あたしの出る幕なんてなかった。


声すらかけられなかったあたしは、臆病で弱虫だから……。