章が上野先生に掴みかかり、ちょっとした騒ぎが起きてから、1週間もしないうちに終業式を迎えた。



あたしはあのあと章と図書室でふたり、話す時間を設けたとはいえ短時間だった。

その上、内容も繊細なことに触れていたからか、少し気まずい雰囲気となってしまい、まともな会話も手紙を書く練習もないまま冬休みに突入してしまった。



そうしてその時になって、あたしはひとつ重大なミスを犯していたことに思い当たる。

それはそう、ベッドに寝転がりつつネットに載せている小説の続きをスマホのメモ帳に打ちこんでいたときのこと。



連絡を取りたいと思った相手……章の連絡先を知らないと気づいたんだ。



章は通知が届くことが煩わしいのか、馴染むつもりがないからか、クラスLINEに参加していない。

だからこっそりとメッセージを送ることはできないんだ。



戸川に聞けば教えてくれるかもしれないけど、間に別の人を挟みたくないと思う。

からかわれてしまいそうだし、なにより章の気持ちがわからない状態で連絡先を手にすることはなんだかこわい。



もしも嫌だと思っていたら。

もしも勝手なことをと思っていたら。

そう思うと心臓が冷えるような気がする。



だからあたしは冬休みの間中、もやもやした気持ちを抱えて過ごした。

鉛が落ちたような状態のクリスマスに年越し、お正月の味気ないこと。