恋文参考書





そこにいたのは、いちゃついているようにしか見えない1年生のふたり。

通路を挟んでぽつぽつと言葉を交わす様子はなんとも言えず初々しい。



どうやら一条が寒がりなふみにカイロをあげているらしい。

それはこの部室内で何度か見かけたことのある光景だ。



そしてあたしは知っている。

いくらここの暖房器具があまり効かないとはいえ、一条は別にカイロを必要としていない。

あいつのカイロはふみのためだけにあるってことを。



そのことを知らないのはふみくらいなんだよね。

あの子はほら、天然だから気づかないんだ。



「あいつら、付き合ってんの?」



当然とも言える金井の疑問にそう思うよね、と同意しつつあたしは首を横に振る。



「まだだよ」

「えー……」



ほんのわずかに金井は体を引いて、心も遠ざかっているよう。



わかる、わかるよ!

バカップルと野次ることもできない今の状況、はやくまとまってしまえと思うよね!

そう思ってあたしはもう約半年だよ!



胸の中であつく叫びつつ、こそこそとあたしは金井と言葉を交わしていた。

最近まで考えたことのなかったふたりの距離。

手紙から意識をそらそうとした彼の必死な行動だったはずが、すっかり本気でふたりを眺めている。



なんだこれ。