恋文参考書





しばしの沈黙ののち、あたしは視線をゆるりとあげる。

行儀悪くヤンキー座りをした金井は顔をそらしている。

ヤンキーがヤンキー座りとかそのまんまじゃないかと思わず考えつつ、いつまでも気をそらしているわけにもいかないので静かに尋ねる。



「なにこれ」



突然の悪口のオンパレードに、あたしはまず最初は眉間にしわを寄せた。

なにがしたいのかちっともわからないし、本当になぞだ。

金井の行動って読めないことばかりなんだよね。



けんかを売っているのかなぁ? と思ったところで目の前の本人に訊いてみた。

すると彼は目つきの悪い瞳を少し丸くする。



「お前が書けって言ったんだろ」

「果し状を⁈」

「は?」



あっ、ごめんなさい。

そうでした。

果し状は違うんだよね、このネタも2度目だもんね。



一気に冷ややかになった視線に肩をすくめた。

ため息をこぼし、不服そうな表情で彼はぶつぶつと言葉を落とす。

あたしはそれをなんとか拾い上げ、



「手紙の練習するって。
お前がそう言うから、とりあえず下書きしてきたんだろうが」

「っ!」



あまりの驚きに息をとめた。

まじまじと、穴があいてしまいそうなほど金井を見つめる。