恋文参考書





詩乃に注意されてしまい、へへっと笑う。

わかってて口にした冗談に予想どおりの反応が返ってきて、思わず口元が緩む。



2年生4人、1年生2人の文芸部。

部員全員がこの場にいたわけじゃないけど、みんな緩いから、詩乃が許したならいいんじゃない? なんて空気になっている。

まぁ月曜日と木曜日の週に2回しか活動していない部活だし、締め切り前後以外はたいしたことはしてないもんね。



ひとり1行程度の文章をテーマにあわせて綴り繋げて短編をつくるというリレー小説や、イラストにあわせてなにかしらの言葉を書き出したり。

詩乃が部長になってからは詩を書くことも増えたけど、基本的にはそんなことを月に数回ほどしているだけ。

普段はみんなおしゃべりをしたり課題をしたりと好きに過ごしている。



詩乃があたしに厳しいのは、締め切り破りの常習犯だから。

そうじゃなかったら今もこんなに言われることはなかったんだろう。



日頃の行いって大事なんだなぁ。

あたしは改善できる気がしないから多分なにも変わらないし、実感するだけなんだけどね。



なにはともあれ無事に詩乃を説得できて、ほっと一息吐く。

安心し、再び恋文参考書に手紙の書き方を書き写そうとした時、がらりと部室の扉が開いた。

驚いた部員全員の視線がそちらへと集中する。



文芸部と関わりのない人が訪れたことなど1度もないここに、ためらいなくやってきたのは、



「え……⁈」



今さっきまで話題の中心になっていた、金髪の彼。

……金井だった。