恋文参考書





当然章もそれくらいにしか思っていないから、ラフな格好。

グレーのチェスターコートの下からはジーンズに普段学校に来る時と同じスニーカーがのぞいている。



そんな自然体も、恋をすると輝いて見えてしまう。

章は目つきの悪さからこわいと感じるけど、街中で見れば金髪もピアスもそこまで奇抜に感じず、恐れるものじゃない。

むしろこいつ、改めて見ると格好いいんだよ。



肌やまぶた、些細なところが整っていて、バランスよく並んでいる。

これでにっこり笑って愛想よくしてみせれば、そんじょそこらの男になんて負けやしないだろう。

無愛想で態度が悪いことを喜ぶべきか否か……悩ましいところだなぁ。



「なんだよ」

「え」

「こっち見てるから」



不思議そうにしている章の反応に、首をすくめる。

さすがに見つめすぎたらしい。

あたしの視線に乗せられた色に、彼が気づいていないことだけが救いだ。



「なんでもないよ」



視線を落とせば、あたしの隣には大きな靴。

足の長さが違えば歩幅も違って、彼が本当ならもっとはやく歩けることをあたしはもう知っている。

わかりやすい優しさのない君の柔らかな気遣いを感じると、あたしはおなかのあたりがぽかぽかとするんだ。



誰かに言いたくて、誰にも言いたくない。

悔しいから、こんな章を知っている人なんて、増えなくていいよ。