「……唯織、そうやすやすと胡蝶蘭の情報を流すんじゃない。コイツが何者かわからないだろうが」
「えー名前くらいいいじゃん、同じクラスなんだからどうせ知ることになるんだし」
「そういうことじゃねえんだよ。のちのちのこと考えろってんだ」
……で、貴方は誰ですか。
そもそもあたしは人の名前や顔を覚えるのが苦手なんだ。
こんなに紹介されても、きっと寝て起きたら忘れてしまう。
総長の前の席に座る精悍(せいかん)な顔立ちをしたツンツン頭の男は、数秒あたしを見つめ「まあ、可愛いけどな」と真顔で頷いた。
その落ち着き加減は、もはやどこかの家庭のお父さんだ。
もうとにかく個性が強い。
5人も紹介された時点で、キャパオーバーだ。
最後の人はまだ名前分からないけど、まあ、いいや。
そのうちわかるだろう。



