――それから10年後…。



私は高校二年生になった。



「おはようございます、お嬢様。お着替えの時間でございます」



「お嬢様、今日のヘアスタイルはいかがいたしましょうか」



私、西園寺梨々香(さいおんじ りりか)の朝は忙しい。



メイドが二人も私の部屋にやってきて、着替えを手伝ってくれたり、髪をセットしてくれたりする。


まるでテレビに出る前の楽屋の芸能人みたい。


いたれりつくせりなのはいいけど、参っちゃう。



私の家は代々会社経営をしていて、現在うちのパパは国内大手西園寺グループの経営者だ。


土地もたくさん持ってて、大きなお屋敷みたいな家に住んでる。


いわゆるセレブにあたる家庭らしい。



そんな西園寺家の一人娘が私。


将来は御曹司と結婚、なんて言われてる。


だけど私は正直、全然そういうのに興味がない。


お嬢様って呼ばれるのも好きじゃないし、パーティーだって、バイオリンのお稽古だって好きじゃないし。

体を動かすほうが好き。


全然おしとやかじゃないし、たぶんパパやママが望んでた娘像には程遠いと思う。



それでも、そんな私をパパもママもすごく可愛がってくれている。


だから私はこの生活が少し窮屈ではあるけれど、べつに嫌いじゃない。