男の手がすっと、着ていたシャツの胸ポケットから何かを取り出したのを、私は見逃さなかった。


シルバーの、小さな……刃物。



ウソでしょ…。


さっきナイフは取り上げたはずなのに、まだ持ってたの?



「あっ…ちょっと…」



「はいそうです。よろしくお願いします…」



だけど電話中のかーくんは、男が目を覚ましたことに気づいてなくて。


私は慌てて知らせようと、彼の元に駆け寄った。



「ねぇかーくん、あぶなっ…」



その瞬間、いきなり起き上がる犯人の男。


完全に不覚だった。



「…隙ありっ!!」



よそ見していたかーくんに斬りかかろうと、小さなナイフを勢いよく振り上げる。



うそやだっ!このままじゃ、かーくんが危ない…!



そう思った私は、反射的に体が動いていた。


かーくんをかばうように、手を伸ばして。



「…だめえぇ〜っ!!!!」



ーーーーザクッ!