「アンタ、いつ返事すんの?」


おはよう以外言い損ねた私は、登校してきた咲を見上げたまま、猛スピードで今日までの会話を振り返る。


「好きなようにすればって言った!!」

「言ったねー。咲は、だけど」


前の席に着く咲は、顔を青くした私をさらに困惑させた。


何、急に……言ったのは違う誰かってこと?


「もうしたの? まだなの? いつすんの?って、ハイエナ共が」


心底面倒くさそうな咲に、ぐるぐると思考をかき混ぜる。


答えを導き出すのは思いのほか簡単で、隠すようにノートの上で拳を握った。


「……ご、ごめん。私また、呼び出されてた?」

「んなわけないじゃん。メグに睨まれんのが怖くて、ひまり本人にも聞けないやつが咲にたかってきたんだよ」


じとりと背中に嫌な汗が浮かぶ。


「ごめん……」

「謝んないでよ、めんどくさいな。そう感じ始めた奴がいるってことを言いたかっただけだし。よっぽど暇なんだねー。咲は興味ない……って、さすがに何ヵ月も待たせるのはやめとけ?くらいは思ってるからね?」

「……うん」


目を合わせられなくなった私の前で、咲が小さくため息をついたのがわかった。


言われなくても知ってるかと言葉を呑み込んだのか。すぐ一杯いっぱいになる私に呆れたのかは、わからないけど。