――ああ。消えたい……。


視線を感じるのもあるけど、朝から家族総出で見送られたダメージが思いのほか大きい。


ふたりの姉には時間いっぱい全身をもてあそばれ、お母さんはわざわざ私の好物ばかりの朝食を作るし、お父さんには学校まで送迎された。


無駄にプレッシャーかかっただけなんですけど……!


ああもう消えたい帰りたい教室行きたくない。


いつもより遅く着いたと思ったら、いちばん登校する人が多い時間帯だった。ありえない。めっちゃ視線感じる。


下駄箱でまごついても余計に怪しまれるだけだろうから、行くけど。視線がとにかく痛い。ひそひそ噂されている気もする。


「ねえ……あれって、」


そうだよ高遠陽鞠ですよ!! どこをどう見たって疑いようないじゃんか!


走り出したい気持ちを堪えて、誰の声も視線も拾わないよう足早に教室へ向かう。


本当に、疑問でしかない。元がメイク映えするような顔じゃないんだから、鏡を見たってどちら様!?なんて変貌は遂げなかったのに。


目新しさを感じてしまったのは、どうしてなんだろう。


『メイクは顔だけにあらず!』と、カーディガンを貸してくれたと思ったら、スカートやハイソックスの長さまで微調整してきたふうちゃんは、出来上がりを見て満足そうだった。


頭に伸ばした指が、するりと毛先まで通るだけで落ち着かない。