それから、一週間。何度か斉藤さんともメールのやり取りをする。

“新しいシステムにするならこんなことは可能か”といった技術的な質問が主で、私にも分かることだったからそれに関しては難なく答えることができた。

なんとなくメールでなら話すのも慣れてきたかな。
この調子で実際に顔を合わすときにも話せたらいいのに。

メールの返信を終えて、一息つこうを私は立ち上がった。

給湯室でお茶も入れられるけれど、フロアの廊下の端には自販機コーナーがある。
ずっと座りっぱなしだったこともあり、足を動かしたくて自販機コーナーに向かった。

自販機コーナーの近くには、椅子はないけど立った時にちょうどいい高さのテーブルがある。
居合わせた人がよく肩ひじついて休憩してるけど、“休んでもいいけど長居はさせないぞ”という会社の意図が見て取れて面白い。


そこに、スーツ姿の男性がひとりいた。

思わず「げっ」と小声で呟いてしまう。見覚えがあるなと思ったら田中さんだ。


「よ、和賀さん」


私を見て軽く手を挙げた。逃げる前に気付かれてしまったか。でもようやく名前は憶えてくれたんだな?


「お疲れ様です」


会釈をして、作り笑いをする。
とっとと買って戻ろう。なんか疲れたから砂糖入りにしようかな。

このフロアにはヘルプデスクと技術部とシステム開発部が入っていて、営業部は基本的には上の階にいるはずだ。まあ打ち合わせだなんだで結構出入りはあるけど、なぜ休憩でまでこのフロアにいるの。