ひゅう、と目の覚めるような冷たい風が私たちの間を通った。


「うっ……」


そうしたら、突然永屋さんが顔を上げ、口元を押さえるじゃないの。


「ちょ、吐くのは勘弁してください」


いやだよ、夜に共用廊下の掃除とか。
近所迷惑だし、なにより汚物の処理とかしたくないですから!


「吐くならトイレで!」


結局、引きずるようにして部屋の中に入れ、トイレに直行していただく。

そこから五分。時折背中をさすってあげたりしたけど、どうも出る感じはない。
トイレからでてもらって、水を差しだすと、


「あー、気持ち悪」


と言いつつ一気に飲み干して、永屋さんはそのまま床に倒れこんだ。

そんなに酒弱いなら、飲まなきゃいいのに。
と思いつつ、この調子なら酔って襲われるなんてこともなさそうだし、放っておこうと心に決める。

風邪だけは引かないように毛布を上からかけ、一応吐かれても困るからビニールを付けたバケツを置いておこう。

部屋の中に違う人がいると思うと落ち着かないけど、この際だからもう置物だと思うことにしよう。

私は着替えを持ち、ユニットバスでお酒の匂いがついてしまった体を洗う。

シャワーを終えて部屋に戻ってもまだ同じ格好で永屋さんが寝ているから。
ちょっと呆れつつ、自分はベッドでおやすみなさい。

イケメンを部屋に連れ込んだ女の対応としてはいかがなものかと自分で思うけど、今日に関しては永屋さんが悪いんだから。

私の知ったことじゃないからね!