「美優……」




オレはそう言って、美優のとなりに座って、美優の肩を優しく抱いた。




美優はこの六畳の部屋に、母親と二人で過ごしていた。




飾り気のない殺風景な部屋に、今時の女子高生の雰囲気はどこにもない。




この部屋はまるで、美優たちの貧しさと閉塞感の象徴だ。




美優は毎日、この部屋の中で願っていたに違いない。




私は変わりたい。

私は生まれ変わって、この部屋を出ていきたい。

私は自分の夢をあきらめない。

絶対に! って……。




オレは美優の震える肩を抱いていると、自分までも悲しくなった。




オレは、美優を本気で守ってやりたいのに、今のオレはあまりにも無力だ。




オレには美優の家の借金を払ってやれるほどの器量はない。




オレは、建設現場で働き始めた見習いの鳶職だ。




オレは、そんな自分のちっぽけさが嫌だった。