パッ、と離れた彼の身体。
そしてそのまま、私に背を向けた。
「ほら、早く帰るよ」
そう言ってスタスタと歩き出す。
「え……ま、待って」
「…………」
うまく頭が働かないまま、山下くんを追いかけた。
ドキドキ、ドキドキ。
唇、触れるのかと思った……
山下くん、近いし…っ
頑張って足を早めて隣に並ぶと、
はぁぁぁぁ…っと、わざとらしい山下くんのため息が降ってきた。
え、何。どうしたの……
見上げると目があって、また心臓が鳴る。
「すげー、いーよね」
唐突に口を開く山下くん。
「ん?」
「普段元気な子の、弱ってる姿って、
そそられる」
「………へえ?」
「いじめたくなるよね」
「…いじめは、だめだと思うよ?」
「うん。だから、我慢してるよ? 俺」
「…………」
弱い人いじめたくなるってさぁ…
人間としてやばいよ。
山下くん、やっぱりそーとー危ない人?



