気づけば立ち上がり

山下くんのシャツを掴んでいた。


次の瞬間、

山下くんの匂いに包まれる。




私、今……抱きしめられてる。


……ええっ!?なんで!?



パニックに陥っているうちに、山下くんが身体を離して私に向き合った。



そして、にっこりと笑う。



「よくできました」



「………へ?」



状況がまったくもって理解できない。



やっぱやめるって帰ろうとして、

俺が帰ってもいいの?って訊くから

思わず引き止めたら……


抱き締められるし、それに……




「よくできましたって、何が!?」



「遠山が素直に
行かないでって言えたことが」



「〜〜〜っ」



「まあ本音としては、もっと、泣きながら縋ってきて欲しかったけどね」



そう言いながら、

実に楽しそうに笑う山下くん。




「さいこーに意味不明だよ山下くん」



「うん。分かんなくていいよ」