息を吐く隙もない。
再び縮まった距離に心臓がはち切れそう。
首筋に吐息がかかってクラクラする。
山下くんに引き込まれる。
このままじゃ……。
「……やめてよ」
頼りない声が自分の口からもれた。
その言葉に
山下くんは肩をビクッと震わせる。
「他の女の人にもこうやって触ってるくせに。笹川さんとも、土曜日……した、んでしょ?」
「……したって何を」
「えっと……その、え……え、っちなこと」
語尾が極端に小さくなって、茹でたタコから湯気が出そうな状態。
もうだめだ。
恥ずかしくて本当に死んでしまう。
そして猛烈に泣きたい。
「してねーよ」
「……んえ?」
「だから、してない」
「……嘘」
「ほんと」
一度まばたきをした。視線がぶつかると、山下くんはもう一度「ほんとに」と言った。



