もう一歩近づいて悪いとは思いながらも画面を覗き込み、表示されている名前を見た。
瞬間、胸がドンと、嫌な音を立てる。
" 春華さん "
心の中でゆっくりとその名前を繰り返して呼んでみる。
はるかさん……。
そうしてるうちにようやく鳴り止んだそれを、しばらくぼんやりと見つめた。
知らない名前。誰だろう。
笹川さん、じゃない。たしか下の名前は「里奈」さんだったから。
他の女の人。元カノ……かな。
すぐそばに眠っているのに、一瞬ですごく遠い人のように感じてしまう。
今目の前にいる山下くんは、私の知らない山下くん。
私にばっかり構ってくるからってちょっと自惚れてたのがばかみたいだ。
この人はいつも私の知らないところで、私の知らない女の人と過ごしたりしてたんだ、きっと。
「クソ山下、くんなんか、きらい……」
回れ右をする。
泣いてしまう前に、早く出て行こうと思った。
思った、のに。
「人の寝顔だけ見て帰る気?」
少し掠れた声が鼓膜を揺らした。



