「や…だ!離してよ…」




さっきまでその手で笹川さんに触れてたくせに…


なんて、すっごいいやな思考してる自分がいやだ……。




「答えて。じゃないと俺、不安で寝れなくなる」



むしろ今すぐ眠って欲しいのですが。



「えっ……と」




まずい。頭混乱しはじめた。


掴まれてる手首にしか意識がいかない。


私、今なにを聞かれてるんだっけ?



えっと、そうだ。「俺、なにかした?」って言われたんだ。

私が無視してたから……。




「や、山下くんが…!」


──笹川さんとキスしてたから。



なんて……言えないよ。

言えるわけないじゃん。




「俺が……なに?」


「山下くんが……山下くんは…山下くんなんか……」



んぁぁぁもう何言ってんの私。

何が言いたいのいったい。




「やっ、ましたくんは関係ない!」


「は?」



ガタンッと音がしたと思ったら、それは自分が椅子を引いて立ち上がる音だった。



「ちょっ、遠山……」



山下くんの手を振り払う。

振り返らずに教室を出た。