制服の袖で乱暴に涙を拭った。
教室に入った私は、何もなかったように装って席につく。
「まだ残ってるじゃん」
お弁当箱を片付けはじめた私を見て、かんながぼそっと呟いた。
「もういいもん。お腹いっぱい」
「何それ。箸洗いに行く意味…」
「お箸洗ってない」
「はぁ?」
「キスしてた。山下くん。笹川さんと水道のとこで堂々と」
「………」
ぐちゃぐちゃに包んだお弁当箱をカバンに押し込んで、勢いよく閉める。
「……愛音、」
「だいじょーぶだよ私。どうせ山下くんのこと忘れるんだし。すぐに、違う人好きになってやるから」
「……また泣いたんだ」
「えっ」
「目、赤い」
「………」



