力なく笑いながらお箸を拾っていると、
「何笑ってんの、きもちわるっ」
かんなの毒舌攻撃をくらう。
「もう、最近の愛音変すぎ。山下のせいだね。あたし、山下ぶん殴ってきていいかな?」
「それはちょっと理不尽だよ、かんな」
「世の中ってのは全部理不尽なの」
「……お箸洗ってくる」
席を立って教室を出て、非常階段近くの水道へと向かった。
廊下はひと気もなくて、私の足音だけがが響く。
なぜか自然と早足になる。
だけどその数秒後、私は足を止めた。
それはちょうど水道の手前、曲がり角を曲がった時だった。
向かい合って二人、キス、していた。
指の力が抜けて、気を抜くとまたお箸を落としてしまいそうで。
目を逸らしたいのに、そんな意志とは裏腹に視線は二人に釘付け。
固まったまま、動けない。



