なんか……だめだな今日は。
うまく、力が入んないや……
心の中でため息をついて一歩踏み出した、
そのとき。
ひやり、と左手に冷たい温度を感じた。
え……
私は一度、瞬きする。
「や、山下くん……」
「早く渡んないと赤になるよ」
淡々とした口調でそう言って、山下くんは私の手をひいて交差点を渡っていく。
私、山下くんと手、繋いでる。
この前も屋上に上がる際に繋いだような記憶があるけど、なんか今日は……
道路の真ん中、だし。
人、いっぱいいるし。
通学路をこうやって歩くのって、
カ、カップルっぽい……よーな。
「遠山の肌あつい」
「……そりゃ、熱あるもん」
「俺の手が冷たいの、わかる?」
「え? うん。わかるよ……?」
「そっか」
「うん」
よくわからない会話。



