校門を出て歩道を歩いていると、少し前を行っていた山下くんが急に足を止めた。
「わっ」と声をあげて、私は山下くんの背中に衝突する。
いたた……。
うわ、恥ずかしいな私。
「ぶはっ。ちゃんと前見て歩きなよ」
「前、見てたよちゃんと……。でも山下くんが急に止まるから……」
「だって、赤だし」
目を細めて笑いながら、山下くんが信号機を指差す。
なんだか、それがとても絵になるなぁ…
なんて思って。
写真撮るとき、山下くんはきっといい被写体になるわ……とか、
ふわふわした頭で考えた。
「……遠山さ。さっきからフラフラ歩いてるけど大丈夫?」
「大丈夫?」とか、人を心配するときに使う言葉のはずなのに、
山下くんは意地悪な笑顔を浮かべてそう聞いてきた。
頭もクラクラして、身体の中心がズレてるみたいな感覚だし、
全然、大丈夫なんかじゃないけど……
「……平気だもん」
大丈夫じゃないなんて言ったら、どうせまた馬鹿されるんでしょ。
山下くん、そーゆー人だし!
軽く睨みつけると、山下くんはさらに楽しそうに笑った。



