やがて、バタン、と音がする。
車の扉を閉める音だ。
「みゃー」
カズコさん、行ってもいい?
立ち上がると、カズコさんは片目をあげた。
好きにおし。
そう言われているみたいで、あたしは笑って冷たい廊下を駆け出した。
ね、やっぱりそうだよね。ミネちゃんはあたしを、置いて行ったりしないんだよね。
玄関にはおかあさんがお出迎えにでていて、前のめりでミネちゃんに話しかけている。
「で、どうだったの」
「大丈夫。粗相はしてないよ多分」
「美音のこと、気に入ってたよ、お袋」
なんかカタセくんまでいる。
ああもう、カタセくんはいてもいなくてもどっちでもいいんだけどなぁ。
「にゃおん!」
おかえり!
そう叫んだら、ミネちゃんがぱあっと顔を晴れ渡らせた。
「モカちゃぁーん。会いたかったようー!」
ぎゅーって抱きしめてくれて、あたしは心底ほっとした。
ああでも、なんで何にも言わずに出かけちゃうのよ。あたし、不安で不安で、仕方なかったんだからね?
「新居は会社の近くで決めようと思ってます」
「あらそうなの。私たちも離れてるから何もしてやれなくて。祥吾さん、よろしくお願いしますねぇ」
お母さんがかしこまった声を出している。
シンキョってなに?
あたしを抱っこしたまま、ミネちゃんがカタセくんを仰ぎ見る。
「ペット可のところじゃなきゃダメだからね。モカちゃんと離れるなんてぜーったい嫌だからね!」
「美音! あんたはどうしてそう上からなの。ごめんなさいねぇ、祥吾さん」
「いえいえ。分かってるよ。……モカも、俺と暮らすの、ちゃんと了承しろよな」
新しいおうちは、ミネちゃんとだけじゃなくてカタセくんとも住むの?
えー、って思ったけど、離れるのに比べたらずっといい。
それに、カタセくん、またクルクルで遊んでくれるかもしれないし。
そうね。あたしもカタセくんと仲良くなる努力だけはするわ。
家族になるんだもの。
あくまでも、努力だけだけどね!



