真面目で冷淡な彼が豹変するとき

そこは図書室。

昼休みが始まってすぐということもあって、人は誰もいない。

中邑くんは図書室に入るなり、図書室の鍵を内側からかけた。

ガチャン、と大きな音が図書室に響く。


「な、中邑くん!どうして鍵……!」

「ふたりきりで少し話したいからです。終わったらすぐ開けますから」


図書室のドアの前に中邑くんが立っていて、出ていくことも出来ない。

密室の空間の中で、ひんやりとした冷たい空気が辺りを漂う。


この空気は元々あったものなのか、それとも中邑くんのオーラにそう感じるのか、私には分からない。

中邑くんの表情は、教室の入口で見せたあの表情から一切変わっていない。

その冷たい表情に、ごくりと息を飲んだ。



「……どうして昨日来なかったんです?」

中邑くんが静かに口を開いた。

「それは……」

「どうしてメールすら返してくれなかったんですか?」

私の言葉を遮るように、そう中邑くんは言う。


中邑くんの顔が見られなくて、目を泳がせていた。


なんと言えばいいんだろう。


彼女とふたりで歩いているところを見ちゃったから?

ショックで、図書室に行けなくなってしまったから?


そう言ってしまった後の、中邑くんの言葉を聞くのが怖い。


振られてしまうのが目に見えてるから。

これ以上、傷付きたくない……!


そう思って何も言えないでいると、中邑くんの手が私の顔にかかって掛けていたマスクを外す。

そして、私の顔を上げて、中邑くんの顔が私の視界に入るように近くに寄せられた。