コクリバ 【完】

私の方へとやってくる高木誠也はゆっくりと歩いていた。

俯きがちで制帽を深くかぶっているから、表情が見えない。

それでも長い脚で、一歩一歩私に向かって真っ直ぐに歩いてくる。


目の前に高木誠也がいる。
高木誠也が動いている。

無事に帰って来てくれた。


待ちきれずに駆け出した。

早く触れたい―――
早く声が聞きたい―――



多くの人たちがが抱き合い、涙する中、彼の数歩手前で歩調を緩めた。

あと少しで彼に届く……



高木先輩は制帽に手を当てながら、私との距離を縮めた。

ゆっくり先輩の顔が上がる。

目が合うと左頬が上がった。

その目は、潤んでいた。


あと一歩のところで立ち止まって見つめ合った。



あの頃より自信に溢れた笑顔がそこにある。

私を愛おしそうな目で見つめている高木先輩がいる。




この人で良かった。

ずっと、忘れないで、良かった―――