リル達は家々の向こうに見える王城を見上げた。

王国で最も強固な警備が引かれている場所。

しかもシオンは第一王子、つまりは王太子であり王位継承者なのだ。警備も一段と強固なものだろう。

それに今日はシオンがクレーラと婚約をするという日だ。

会いに行くとしたら一番難しい日だろうことはリルにもすぐ分かった。

アーディのいう通り、シオンに会いに行くのは至難だ。ほとんど無理、無謀だろう。


シオンがいる場所は分かるのに、こんなにも王城は近くにあるのに、会いに行くことができないなんて。

リルは歯痒さに拳を握りしめる。

アーディもメアも何と言えば良いのか、何か良い考えがないのか必死に考え込む。

訪れた深い沈黙を破るようにオリバーが咳払いをした。


「リル、お前に仕事をやろう」


「え、仕事?」


正直、今とても仕事をする気になどなれなかったのだが、リルは今フルリエルで働く身。仕事中に仕事をするのは当然のことだ。



「お前だけの特別な仕事じゃ、リル」



そう前置きをして、オリバーは仕事の話を始めた。