立ちはだかる白く大きな門と、その向こうに見える巨大建造物。

塔のように聳えるいくつもの白い大きな建物のてっぺんには、深緑の尖った屋根が乗っかっている。

それは王都の中央に君臨する、この国の要。

王族が住まう王城だ。


下宿部屋の窓から少しだけ見えていたけれど、まさか間近で見れる日が来るなんて思いもしなかった。

圧倒されているリルにオリバーが言った。


「仕事じゃ、行くぞ」


その言葉にリルは返事をした。


「はい!」


そうだ、自分は遊びに来たのではない。花屋フルリエルのバイトとしてここにいるのだ。

そう思い直して荷台を引く。オリバーが歩いて行くその先を追いかけた。


豪華絢爛を極める王城は、その外観に劣らず内装もとても豪華だった。

白を基調とした高級な内装は色とりどりの花がよく映える。

王都も花で溢れているが王城も例外ではなかった。至るところに花が飾られている。

それらに目を奪われていると「やあ、オリバーさん」と前から歩いていた貴族らしい人物が声をかけた。


「この前はお世話になりました」

「シャルトル公か。2か月ぶりじゃのう」


シャルトル公と呼ばれたその人物は「とても素敵な花束をありがとうございました」とオリバーに握手を求めた。