料金を払い、ネカフェを出る。
既に太陽が落ちかけ、辺りはオレンジ色に染まっていた。


土曜日で出掛ける人も多いのか、とても賑わっている。
みんな一様に明るい顔をして、私とはまるで違う。

酷い顔を見られないように、少し俯き加減で駅へと向かって歩いた。



居酒屋のある最寄りの駅に着き、電車を降りる。
飲み屋の多い街なだけあり、駅前の広場もまた多くの人で賑わっていた。


人ごみを避けつつ、広場を抜け目的の場所へと歩いていた、――その時。



「――京香!」


腕をガッと掴まれ、名前を呼ばれた。


掴まれた勢いで、身体が後ろに向く。
そこにいた人物を目の当たりにして、息を飲んだ。


目の前には、絶対に会いたくない、もう会わないと決めた、その人が立っていた。




――……圭悟!!


まさかこんなところで会うとは思わなかった。
半年ぶりに見る圭悟の姿は、前と比べて少しやつれているように見えた。


思わず間に皺を寄せ、圭悟を睨む。
掴まれた手を離そうと、身体を左右に大きく振った。


しかし思った以上に力が強く、振りほどく事が出来ない。


「やめて、離して。あなたに触られたくない」

「嫌だ、離さない。離したら逃げるだろう?」


思い詰めたような表情で私を見る。
その表情は、最後に会った時に見せた顔だった。