聡さんの死は自殺だったこともあり、身内と特別仲の良かった友人たちだけの葬儀で終わらされた。


生徒たちにもその事実が告げられる事なく、数日が経過していた。


「野乃花、最近勉強すごいじゃん」


休憩時間中、数学の教科書とにらめっこをしていたあたしに結菜がそう声をかけて来た。


「この前の公式がようやく理解できたんだけど、ここままじゃ次のテストの点数が低すぎて怒られそうだなぁと思って」


あたしはそう言い、ポリポリと頭をかいた。


「この前の公式って、出された課題は終わったやつだよね?」


「うん。課題を提出したときはなんとなくで解いてたの。今ようやく理解できた所」


あたしはそう言い、ペロッと舌を出した。


あの日は色々とあったから集中して課題に取り組むこともできなかったんだ。


だけど奇跡的に答えはほぼ正解だったらしく、先生からのお叱りも受けていなかった。


「野乃花って結構強運だよね」


結菜が呆れたようにそう言う。


「でも、その公式はマジで難しいよな」


突然後ろから声をかけられて振り向くと、和があたしの教科書を覗き込んでいた。