バスを下りたあたしと聖也は丸山先生のお兄さんに声をかけた。


近くで見ると本当によく似ている。


けれどその顔には覇気がなく、目はうつろだ。


「俺たち、丸山先生に教えてもらってた生徒です」


「あぁ、制服を見ればわかるよ」


見た目に反して、声はハッキリとしている。


それを聞いて少し安心した。


「俺は大鳥聖也。こっちは塚原野乃花」


聖也が自己紹介してくれたので、あたしは軽く会釈をした。


「俺は丸山聡(マルヤマ サトシ)」


「あたしたち、丸山先生の事本当に尊敬していたんです。このままお別れするなんて、辛くて……」


あたしがそう言うと、聡さんは今にも泣きだしそうな表情を浮かべた。


余計に辛くなるような事を言ったのはあえてだった。


自殺を考えるほど辛い時は泣いた方がいい。


泣けば精神が落ち着いて、ホッとする時がある。


「だから、丸山先生のお話を聞きたいんです」


あたしは続けてそう言った。


「幸彦の話を?」


聡さんは今度は目を見開いてあたしを見た。


「はい。先生の子供の頃の話とか、普段の様子とか、なんでもいいんです」


「それは……かまわないけど……」


するとすかさず聖也が口を開いた。


「丸山先生の写真が見たいです」