あたしはいつも通り支度をして、いつも通り家を出た。


行きかう人々の胸元を見ないように、まっすぐ前だけを見て歩く。


番号札が視界に入ってしまうと、嫌でもその人がどこくらいで死ぬかがわかってしまう。


だから、見ないようにする。


あの夢を見る時は決まって人の死期が近い時だった。


番号がゼロに近い人間を見ると、過去が蘇ってくる。


幸いな事にあたしはまだ若く、周囲がどんどん死んでしまうような年齢ではない。


だから悪夢にうなされるのは年に1度とか2度だった。


そしてそれが今日だったと言う事は……。


あたしは下駄箱で靴を履き替えながら副担任の男性教師を思い出していた。


昨日学校で会った時、先生の番号札は2桁まで減っていた。


先生はもうすぐ死ぬ。


それがどういう状況で死ぬのかはわからなかったけれど、毎日元気に仕事をしている先生は病死ではないと言う事だけはわかった。


あ、自殺っていうのもあり得ないかも。


ちょっとしたミスなら笑い飛ばせる先生だ。


なにか思い悩む事があっても自殺するほど抱え込んだりはしなさそう。


だとすると、事故死か。


あたしはぼんやりとそんな事を考えながら教室へと向かった。