あたしは聖也の前向きさ加減に呆れながらも、少しだけ尊敬していた。


人間の生死を操る事なんてできない。


そう思い、死ぬことがわかっていても何もしてこなかったあたしとは違うんだと感じた。


でも……。


帰り道、あたしはジッと聖也を見ていた。


またほんの少し希望が生まれたおかげで、聖也の表情は明るい。


「なぁ、野乃花には番号が見えているんだろう?」


「う、うん」


あたしはぎこちなく頷いた。


「俺の予知夢は前日だったり、数日前だったり、不規則なんだ。だけど、番号ななら徐々にへ行っていけばすぐに次に死ぬ人物を特定することができるってことだろ?」


「まぁ、それはそうなんだけど……」


あたしは曖昧に言葉を濁した。


日本に止まらず全国民の番号が見えているから、その番号は大きすぎて正直減っているのかどうかの区別はつかない。


死ぬ前日、または当日になって初めて数字が減っていることに気が付くことも多かった。


「番号が減っている人に気が付いたら、教えてくれないか?」


「え?」


あたしは目を見開いて聖也を見た。


「もし、俺より野乃花の方が早く人の死に気が付けたら、その分助ける方法が探せるかもしれないだろ?」


聖也の言葉に今度はしかめっ面をした。


あたしの力を聖也に貸す事はできる。


だけど、それで何度も失敗を繰り返せば、聖也はまた自分を責めるんだろう。


あたしは聖也の手首に行く筋もの傷痕があることに気が付いていた。


リストカットの痕だ。