あたしは聖也の横に座り、ぼんやりと外の景色を眺めていた。


打ちつける雨は強さを増して、雷雨がとどろき、すぐ近くから煙が立ち上るのが見えた。


「山に落ちた」


聖也が呟くようにそう言った。


不思議と、恐怖は感じなかった。


ようやくあるべき場所へ戻ることができる。


そんな気分だった。


バキバキと木々が折れる音が聞こえてきて、倒れて来た木がバスの前を塞いだ。


しかし、聖也が夢で見たようにバスの前後が木によって封鎖されることはなかった。


クラスメートたちをバスから降ろしたことで、間に合わなかったのだ。


「どうするの?」


そう聞くと、聖也は左右に首をふった。


「どうもしないよ」


エンジンをかけたまま、運転席からこちらへ移動してくる。


「少し、座ろう」


聖也はそう言い、運転席の後ろの席に座り大きく息を吐き出した。


馴れない運転で疲れたのかもしれない。


狭い山の一本道、バスがUターンできる幅もない。


あたしは聖也の隣に座って、その手を握りしめた。