孤独死

　今になって思うことがある。もし、あの時、佐藤さんの告白に"はい"と返事をし、彼女と付き合い、結婚していたら、俺の人生はもっと違っていたのだろうか、と。
今更こんなことを考えても仕方のないことだとは分かってはいるが、どうしても考えてしまうのだ。そして、後悔している自分に気づく。本当に、俺という人間は都合の良い男だ。
とある人がこんなことを言っていた。
―人生には時には妥協も必要だ
と。俺はあの時、妥協するべきだったのだろうか。俺はどこで選択肢を間違えてしまったのだろうか。今となっては答えを見い出す術はない―。
「ちょっと聞いた？あそこに住んでたおじいさん、最近姿を見かけないと思ってたら、死んでたんですって！新聞配達員の方が遺体を発見したらしいわよ」
「奥さんもいなくて、天涯孤独だったんでしょ？お気の毒にねぇ～。私達も他人事じゃないわよ。子供達も独立して、家なんて滅多に帰ってこないし。旦那は旦那で仕事やら、付き合いやらでいつもどっかに行っていないし」
「本当にねぇ～。孤独死だけはしたくないものね」