母さん

 その後すぐ、母さんは息を引き取った。もう母さんが俺に弁当を作ってくれることも、そして、俺の名前を呼んでくれることも二度とない。俺は親孝行できるチャンスを永遠に失ったのだ。
結婚式に呼んだり、孫の顔を見せたり、色んな物をプレゼントしてみたり、色んな所へ連れて行ってみたり―
そんなことを俺も母さんにしてあげたかった。
―達也、母さん、とても幸せだよ
って言ってもらいたかった。
今できる唯一の親孝行、それは母さんの分まで生きることだ。だから、俺は今、生きている。前を向いて、生きている。それが今、俺が母さんにできる親孝行だから。
俺の中で母さんは生き続けている。そして、今でも俺に笑いかけてくれているような、そんな、気がするんだ。