母さん

 俺と担当医が集中治療室へ入ると、看護師達が母の周りで忙しなく動いている。すぐさま、担当医がその中へと入っていく。俺はただ、その様子を眺めていることしかできなかった。母が目の前で死にそうになっているのに何もできない自分が情けなくて、歯痒かった。
「鈴木さん!!お母様の手を握って、声をかけてあげてください!」
看護師の声だ。俺は看護師に言われるがまま、母の手を握った。母の手は暖かかった。ふと、子供の頃、買い物の帰りに母と手を繋いで一緒に帰った時のことを思い出した。そして、自然と涙が溢れ出た。
「まだ俺、親孝行も何もできてねぇのに・・・こんなの、アリかよ」
俺は母の手をより一層、強く握り締めた。涙が頬を伝い、俺の手の甲の上に落ちた。