オレが話しかけても、美奈子はいつものように、表情を変えず、オレに何も話してはくれなかった。




オレはそのことに、胸が痛み、失望したが、それでも美奈子に笑って欲しくて話を続けた。




「なぁ、美奈子。

お前だってうれしいだろ?

あの腐った法律、R-GPS法を考案した池下聖夜が、苦しみながら死んだんだ。

最後に池下は、自分の舌を噛みちぎって自殺したんだ。

ざまぁみろって、オレは思ったよ。

なぁ、美奈子、お前もそう思うだろ?

池下聖夜、地獄に落ちろって……」




「純くん、何でそんなことをしてしまったの?」




それは美奈子がここ数ヶ月で、初めて話した言葉だった。




「そんなことをしてしまったら、純くんは罰を受けなくてはならないでしょ。

そしたら、純くんの未来がメチャクチャになる。

私はそんなことを少しも望んでいない。

私は純くんまでも失って、私には本当に何もなくなってしまう。

そんなの私はイヤだよ。

私は純くんを失いたくない。

私は、純くんを……」




美奈子はそう言って声を上げて泣いていた。




オレは美奈子のその様子を見て、冷静ではいられなかった。