「アンタ、オレは本当に、料金を倍もらうからね」




「わかってる。

いいから、アクセルを踏め!

オレは今、急いでるんだ」




オレがそう言うと、タクシーの運転手はオレの言い方が気に入らなかったのか、ムッとした顔でアクセルを踏み込んだ。




オレは、夜の国道を走るタクシーの後部座席にゆったりと座ると、タクシーの運転手を鼻で笑った。




〈 間抜けな運転手さん、アンタは運が悪いよ。

オレをタクシーに乗せても、倍の料金どころか、正規の料金も払えねぇ。

アンタには悪いけど、オレは今、必死なんだ。

自分が五体満足な体でいるために! 〉