朝はめっぽう弱いあたし。

ありがたいけど、今日も朝食抜きだ。


最近、あたしの朝は忙しい。



「急に朝練に力なんて入れて……。この分じゃ、今年は県大会くらい行けるんでしょうね。期待してるわ」



お母さんの小言と皮肉は続く。



「だからアンタも、近場の高校にすれば良かったのに……」



今起きて来たばっかりのお姉ちゃんを横目に、



「行ってきまあす!」



あたしは家を飛び出した。




高校までの道のりは、駅まで自転車で10分。電車に乗って25分。


『近い方がギリギリまで寝てられていいじゃない。電車なんか乗ったら、痴漢に遭って泣くのがオチよ』


自転車で10分で行ける高校に通っているお姉ちゃんは、あたしが緑ヶ浜を受験すると言った時、何度もそう言って止めた。


それでもあたしは電車通学がしてみたくて。

ただ、それだけの理由で緑ヶ浜を選んだ。



繁華街で途中下車して、買い物をしたりお茶したり。

女子高生らしいことを満喫したかったから。


……彼氏が出来れば、デートだって。


そんな淡い期待も胸に隠して。



でも今は、緑ヶ浜へ来て本当に良かったと思ってる。


耀くんに出会えたから。