ふいに視線を感じて目線だけ動かすと、 そのすぐ50センチ脇、俺を見つめる紗衣と目が合った。 ニコリと微笑む紗衣。 「……っ」 咄嗟に俺はノートに視線を戻して、シャーペンをクルクル回した。 俺は黒板を見ていただけだ。 まひなんか見ていない。 やましいことなんて一つもない。 そう自分に言い聞かす。 それなのに、手のひらにはジワリと汗が噴き出した。 紗衣の視線を感じて回す手元を止められない。 顔も上げられない。 コロン……。 手元が狂って、シャーペンが床に落ちてしまった。