開いた奥の向こうには、掲げられた横断幕の数々が見えた。


耀くんが愛してやまない陸上の痕跡。


それを見たら、胸が締め付けられた。



「……聞いた?耀太、明日から来るって……」



───ドクンッ……。

名前を聞いただけでも不安が広がる胸。



「……うん」



拓弥くんも知っているんだ。


耀くんがこれから背負うもののことを。



「耀くん……ここに戻って……」



ふいに出した言葉。


言葉足らずのそれを拓弥くんは理解して、



「多分……無理だと思う」



辛そうに唇を噛みしめた。



「…………」



一瞬の悲劇は、耀くんから色んなものを奪っちゃったんだね。


悔しいけど



「仕方……ないよね……」



沈んだあたしにかけられたのは、思いがけない一言だった。