「意識が……混濁しているようです……」



声を振り絞るようにおじさんが言った。




ダンッ……。


あたしは、膝からそのまま冷たい床に落ちた。



そんなっ……。




全身を、感じたことのない痺れが襲う。

さっきよりも呼吸が苦しくなって、体が冷たくなった。




どうして。

どうして耀くんが……っ……。



頭の中は真っ白になる。



この場だけが、水を打ったように静まりかえる。



しばらく。

誰も、何も口に出来なかった。







「おじさん……お願い……耀くんを…助けて……っ」



あたしには、何も出来ない。



声にならない声で、ただそう言うだけしか。

祈るだけしか……。



そして。



「……大丈夫だ。絶対助ける」



握り返された強いその手を

信じるしかなかった。