「……まぁ、一応な……」



そう呟いた耀くんの顔は、少し翳っていて。



「けど、俺、出るかわかんねぇ」

「…………?」



続けた意外な言葉に、あたしは足が止まった。

数歩先で、耀くんも足を止めた。



「俺さ……」



耀くんの言葉を待つ。



「……別に記録が欲しくて跳んでるわけじゃないし。大会とか、はっきり言ってカンケーない」



言い切った耀くん。


どう返していいか、分からなかった。


耀くんの実力は桁が外れている。

ただ、『もったいないよ』なんて、そんな軽々しい言葉を掛けちゃいけないことだけは、はっきり分かった。


凛ちゃんからは、中学生時代の耀くんの話を聞いていたから……。


悔しい思いをしたことも。

投げやりになっていたことも。



どうやって、またハイジャンへの道を歩み出したのかは分からないけど、

そう言うからには、耀くんなりの想いがあるんだよね……。




「優飛の名前、俺がつけたんだ」


ふいに、耀くんが言った。