「モコちゃん、片づけなんていいのに」


河田さんの声が聞こえてきて振り返ると、まだ髪が濡れた状態の河田さんが立っていた。


シャンプーの匂いと湯気にドキッとする。


さすがに、同級生にはない大人っぽさを感じる。


あたしはすぐに河田さんから視線をそらせた。


「髪の毛ちゃんと乾かさないと風邪ひきますよ? 片付けはあたしがやっておきますから」


そう言いながらも自分の心臓がうるさい事に気が付いた。


河田さんは瑠衣とは違い、憧れのような存在だ。


大人で優しくて……セクシーで。


それは恋とは違うとしっかり理解しているのに、心臓だけはどうしても反応してしまうらしかった。


「ごめん。頼むよ」


河田さんの申し訳なさそうな声が聞こえてきて、洗面所が閉まる音が聞こえて来る。


あたしは『お客様』の内臓をホウキでかき集めながらホッと息を吐き出したのだった。